World Barista Championship
Finals Presentation Analysis
2025 WBC ファイナル概要
2025年ワールドバリスタチャンピオンシップは、WBC25周年を記念してイタリア・ミラノのHostMilano(Fiera Milano, Rho)で開催。51カ国の代表が参加し、Round 1 → セミファイナル(上位15名+ワイルドカード1名)→ ファイナル(上位6名)の3ラウンドで競い合いました。各ラウンドのスコアはリセットされ、ファイナルの得点のみで最終順位が決定します。以下は、ファイナルラウンドに進出した6名のプレゼンテーション分析です。
※ 1選手あたり合計44分のステーション割当。テーブルセット開始時に待機していなければ失格の可能性あり。
競技ルール要点
3カテゴリ × 4杯 = 計12杯
エスプレッソ・ミルクビバレッジ・シグネチャービバレッジの各カテゴリ4杯を4名のセンサリージャッジに提供。提供順は自由だが、1カテゴリを完了してから次に移る必要あり(違反で失格)。
15分 + 減点制
パフォーマンスは最大15分。超過1秒につき1点減点。16分を超過すると即失格。シグネチャーの仕込みのみ競技時間中いつでも可能。
審査体制(ラウンド別)
Round 1:センサリー4名+テクニカル1名+ヘッド1名。
セミファイナル・ファイナル:センサリー4名+ヘッド1名(テクニカルなし)。ヘッドジャッジがStation Management・清潔さを代行評価。
マシン設定
圧力 8.5–9.5 bar、温度 90.5–96℃。グループヘッドごとに温度選択可能。スポンサー提供マシン・グラインダー必須使用。追加電気機器は2台まで。
ミルクビバレッジ定義
無香料・無加糖の市販ミルク(動物性・植物性問わず)のみ使用可。ブレンドも認可。温度やスチーム方法は競技者の裁量。
シグネチャービバレッジ
エスプレッソベース必須。アルコール禁止。全材料の原包装をジャッジテーブルに提示。独創性・味・バランス・プレゼンテーションを評価。
評価スケール
Yes/No判定、0–3(精度・印象)、0–6(体験評価)の3タイプ。タイブレークはエスプレッソのセンサリースコア→ミルク→総合印象の順。
ラウンド構成
Round 1(全選手)→ セミファイナル(上位15名+Team Barワイルドカード1名)→ ファイナル(上位6名)。各ラウンドのスコアはリセット。ステーションレイアウトは9種から選択。
Jack Simpson
2024年釜山大会でわずかな差で優勝を逃した経験を起点としたプレゼンテーション。結果発表の瞬間、悲しみと失望に飲み込まれていたジャックを、会ったこともない男性が突然抱き上げた。コロンビアの生産者ジョナサン・ガスカ。彼はステージで提供されたコーヒーの生産者であり、涙を流しながら、「彼のコーヒーがそこに立つにふさわしかった」という喜びに溢れていた。ジョナサンが思い出させてくれたのは、「コーヒーとは人であり、人間同士のつながりであり、単なる結果ではない」ということ。バリスタ競技は限界を超えさせてくれるが、結果にばかり集中するほど責任から切り離される。今、最も重要なのはバリスタの「声」であり、ステージ上であれカフェであれ、すべての人を代表すること、コーヒーの価値を共有すること、業界に発信するメッセージに対する責任。プレゼンテーション全体を過去12ヶ月の「日記の記述」という形式で構成し、各コースの間にジャーナルの日付とエピソードを挟むことで、認識の変化のプロセスを追体験させる独自の演出でした。
Espresso Course
精製の科学:窒素を充填したタンク内で酸素を完全に排除し50時間発酵させることで、ジューシーなテクスチャーと美しいシトラスの品質が生まれる。ジャミソンは感覚に基づいてタンクへの窒素充填を続けることで、カップにシトラスの品質を付与。最終的にレイズドベッドで20日間乾燥し水分11%に仕上げる。
抽出の工夫:「ウェーブマシン」を用いて分子を結びつけ、テクスチャーを向上させる技術を採用。エスプレッソの重さを計量し、カップの薄い側から2口で飲むことを指示。
農園の背景(日記:2025年3月5日):パナマのジャングル奥深くにあるフィンカ・デボラを訪問。乾燥エリアからジャスミンの香りが漂う息をのむ美しさの農園だが、最近の雨でチェリーが割れ、土砂崩れで木と表土を失い、二度と植えられない土地が生まれた。数年前にも同様の極端な降雨で農園全体を失った経験があるとジャミソンは語った。この訪問がコーヒー生産の脆弱さを実感させ、「コーヒーの価値は値札ではなく、何年もの努力と犠牲による」という認識に至った。
Milk Course
ミルク構成:90%フルクリームミルク + 10%凍結乾燥オーツミルク。リッチでクリーミーなミルクに打ち勝つコーヒーの強さを出すため、プロバット社のUG22で焙煎。
農園の背景(日記:2024年8月8日):フィンカ・サルサ初訪問後の記述。ジョナサンは高収量で家族の収穫の屋台骨だったカティモール種を切り倒し、うまくいくか分からないゲイシャ種を植えようとしていた。加工エリアには真新しいバイオリアクター(発酵タンク)があり、古い発酵桶は角に追いやられていた。ジョナサンは「私が来るという理由だけでそれを買った」と告白。農園が他の生産者ほど進んでいないと思われるのを恐れていた。この事実は「競技者として言動することがどれほど注目されているか」を痛感させ、生産者に対して明確で責任あるメッセージを送る必要性を認識するきっかけとなった。
Signature Course
ジョナサン(パパヨ種)とジャミソン(ゲイシャ)、2つのエスプレッソベースで構成し、それぞれの生産者の人生と献身を液体で表現。ジョナサンには伝統的な発酵方法(ミードとビネガー)、ジャミソンには生産の副産物の価値化という形で敬意を示した。
材料構成
SCORING ディスクリプター充足度チェック
Simon SunLei(サイモン・サンレイ)
地球の気温上昇がコーヒーの収穫量と品質の両方に深刻な影響を与えている現実を起点に、「エコ・フレンズ・プロジェクト」として低炭素イノベーションで生産地と消費者を結ぶ架け橋を構築するという一貫したサステナビリティ・ストーリー。全プロセス — バイオ炭による革新的農業、廃水ゼロの精製処理、カーボンフットプリントを70%削減する低炭素ミルク、コーヒーの副産物を新しいフレーバーへと変えるアップサイクル — が持続可能性のサイクルと結びつき、「すべてのステップが次のステップへと貢献する」という設計思想を貫いた。会場では生分解性トレイで提供し、メニューカードはコーヒーのシルバースキン(銀皮)から作成。過去3年間で20以上の都市を訪れ数万人とエコ・フレンズの活動を共有してきた実績を背景に、セミファイナル最高得点(604.5pt)で通過した実力派。
Espresso Course
EcoVac(エコ・バック):独自開発の真空チャンバー。挽いたコーヒーを中に入れ回転する針で再分配することで、最大14%多くのCO₂が放出される。これによりコーヒーベッドが均一になり抽出が向上する。
環境インパクト:このゼロエミッションのバイオ炭メソッドは、コロンビアからパナマのボルカン地域に持ち込まれ、2022年に61トンの炭素を削減し、毎年さらに削減し続けている。「どんなに小さな一歩でも、コーヒーに永続的な影響を与えることができる」。
Milk Course
ミルクの追加処理:甘みを加えながらさらに20%の水分を取り除くため、60℃×2時間のスロークッキング(低温調理)を実施。これにより凝縮された甘みとリッチなテクスチャーが生まれる。
焙煎:密度の高い豆に対して速く均一な熱循環を確保するため、ローリング社のスマートロースターを使用。豆のサイズを2倍に膨らませることで抽出が容易になり、アミノ酸がフルーティーなフレーバーへと変容する。このエネルギー効率の高い焙煎が排出量を削減。
Signature Course
バイオ炭メソッドで使用したハーブのアップサイクル材料を使い、サステナビリティを強調しながら新フレーバーを生み出す設計。エスプレッソは事前に冷やし、香りを閉じ込めた状態で冷たく提供。
材料構成
サステナビリティの循環:ミルクを再利用して無駄を削減。コーヒーの果肉は土壌栄養として農園に返送し、土壌と水質汚染を低減。使用済みの粉を乾燥させて「コーヒーグラウンド・カップ」を製作し、環境に優しいコンセプトを体現する器で提供。
SCORING ディスクリプター充足度チェック
Ben Put
「私たちが誰かを本当に理解している時、その人の小さな欠片(small pieces)を心の奥底に持ち歩くようになる」というコンセプト。冒頭でジャッジに目を閉じてもらい、人生にポジティブな影響を与えた人を思い浮かべさせ、「猫派か犬派か」「甘党か塩派か」という思考実験でその人をいかに深く知っているかを体感させる導入。コーヒーを学校や本からではなく「人」から学んだバリスタとして、3人の生産者 — ボリビア・ヤナカチのマリアナ・イトゥラルデ、パナマ・ボケテのウィルフォード・ラマスタス、パナマ・ボルカンのジャミソン・サベージ — そして化学者クリストファー・ヘンドン(オレゴン大学化学教授)から受け取った知恵が今の自分を形作っているという物語。各ドリンクがメンターの影響のメタファーとなり、「内に秘められた資質は、小さな欠片を慎重に加えることで明らかになる」というメッセージを一貫して展開した。
Espresso Course
ウィルフォード・ラマスタス(パナマ・ボケテ):エチレンガスを使った実験。熟したゲイシャのコーヒーチェリーを袋に入れ、自然発生したエチレンを加えることで熟度をこれまでにないレベルまで押し上げ、素晴らしい甘みを付与。
ジャミソン・サベージ(パナマ・ボルカン):革新的な「エクリプス」プロセス。嫌気性発酵(アナエロビック)から始まり、パルピング(果肉除去)後にウォッシュドとして仕上げるハイブリッド精製。コーヒーにフローラルさを付与。
マリアナ・イトゥラルデ(ボリビア・ヤナカチ):過去25年間ウォッシュドプロセスのみを生産してきた彼女が、初めて8日間発酵のナチュラル・アナエロビックに挑戦。これまで提供されたことのないコーヒーであり、素晴らしいストーンフルーツのノートを付与。
Milk Course
2段階体験の設計:ヘンドン教授との「温度によるフレーバー化合物変化」の研究成果を具現化した「全く新しいミルクコース」。まず温かい状態で一口(ダークチェリー・ベイリーズアイリッシュクリーム)→ ベンが戻り電動スターラー(8,000rpm)でカップ底の凍結ココナッツミルクを攪拌 → 温度が10℃まで低下し全く異なるフレーバー体験が出現。同じ液体から温度変化だけで完全に違うドリンクが生まれるという科学的デモンストレーション。
Signature Course
「最高の教師やメンターは、私たちが自分でも気づかなかった資質や能力を見出してくれる」。各材料が「小さな欠片」としてエスプレッソの中に眠るノートを育み、変容させるメタファー。
材料構成
SCORING ディスクリプター充足度チェック
Jason Loo
生まれつき内向的な人間が、バリスタとしての旅路の中で外向的な特性を練習し始め、コーヒーが人生を導く「言語」となったプロセスを表現。「認識する(Acknowledge)→ 練習する(Practice)→ 変容する(Transform)」の3ステージをそれぞれエスプレッソ・ミルク・シグネチャーに対応させた。パナマ・ゲイシャ(繊細でエレガント=内向的)とマレーシア産リベリカ種(大胆で表現豊か=外向的)という2つの対照的なコーヒーを軸に構成。2015年に初めてWBCステージに立った経験から10年の成長を経て、「コーヒーを通じてコンフォートゾーンから抜け出し人々とつながる勇気を得た」というパーソナルな旅路を語った。リベリカ種の生産者が偶然にも自分と同じ「ジェイソン」という名前であるという縁も物語を彩った。
Espresso — 「認識(Acknowledge)」
Milk — 「練習(Practice)」
Signature — 「変容(Transform)」
「認識」と「練習」の土台の上に成長が築かれた時、変容が起こる。内向的と外向的の両方の性格を一つにまとめた2パート構成のドリンク。エスプレッソはゲイシャ18g+リベリカ2gに調整(ミルクコースの5gから減らし、アロマティックインフュージョンの表現豊かな特性を補完しつつ全体のコアの骨格を確保)。
材料構成(2パート)
SCORING ディスクリプター充足度チェック
伊藤 大貴(Hiroki Ito)
日常のカフェでコーヒーの淹れ方を学んだバリスタが、「おもてなし」の精神 — 親密さ、ストーリーテリング、忍耐 — を通じて究極の一杯を追求する旅。「究極の一杯」の定義はフローラルさ、甘さ、バランス、そしてゲストを笑顔にすること。コーヒーにおける完璧さは常に「目的地」だったが、おもてなしの考え方によって「旅」として再構築された。コース順を通常の「E→M→S」ではなく「シグネチャー(親密さ)→ ミルク(ストーリーテリング)→ エスプレッソ(忍耐)」と独自に構成。おしぼりの提供から始まり「あなたは今ここにいて、大切な存在です」と伝えるジェスチャーで幕を開け、全ビバレッジに同一のクラシックスタイル・ゲイシャを使用することで一貫性を保ちながら、WBC25年の歴史と自身のバリスタとしての10年の旅を重ね合わせた。小さなテーブルで「距離を置かない」ことにこだわり、全ドリンクを一段高い台で提供して「全員を近づけながらコーヒーを新たな高みへ押し上げる」という演出を貫いた。
Signature Course(第1コース:親密さ)
コーヒーの詳細を最後のエスプレッソまで保留し、ウェルカムビバレッジとして温かいシグネチャーから開始する大胆な構成。バリスタの技術であるスチームで45℃に温めて提供。「おもてなし」はゲストのありのままに寄り添うことであり、だからこそ専門用語なしに体験から入る。
材料構成
Milk Course(第2コース:ストーリーテリング)
WBC25年への敬意として、あえてクラシックスタイル(牛乳のみ)で提供。「オーツミルクではなく、甘い牛乳だけがこのコーヒーと最もよく合い、調和をもたらし、甘くてバランスの取れたカップのフレーバーを高める」。クリーンで甘い北海道産乳脂肪4%ミルクがフローラルなノートを輝かせる。この一杯はバリスタとしての自身の旅、25年のレガシー、そしてコーヒー自身のストーリーの3つを称賛。
焙煎(2つのプロファイル):どちらもイエローイングフェーズで火力を下げ、フローラルなアロマの化合物であるリナロールを保存。その後ファーストクラック前に火力を上げる。ミルク用にはフローラルさ強調のため短いディベロップメント、エスプレッソ用には甘さとバランスのため長いディベロップメント。
Espresso Course(第3コース:忍耐)
20年以上にわたるゲイシャストーリーのパイオニアであるエスメラルダの追求が「忍耐と献身」を体現。クラシックスタイルのウォッシュドプロセスでフローラルの品質とエレガンスを際立たせている。カップに現れるフローラルな表現は「これまでに経験した中で最高のアウトプット」。冷ますことでフレーバーが開く設計。
SCORING ディスクリプター充足度チェック
※提供順:シグネチャー(第1)→ ミルク(第2)→ エスプレッソ(第3)
Christopher Sahyoun Hoff
哲学者シドニー・バンクスの「3つの原理」— マインド(普遍的知性)、コンシャスネス(意識・気づき)、思考(創造力)— を通じ、競技における幻想(トレンドを追いかける、考えすぎる、他者との比較で自分を見失う)を乗り越える旅。エスプレッソを「マインドに導かれた選択」、ミルクを「意識を通した表現」、シグネチャーを「思考が形作る創造」として構成。核心は、多くの人が「ゲイシャを選ぶべき」と言い「ウシュウシュはリスクが高すぎる」と警告する中で、テイスティングした瞬間にノイズが静まり、自分の味覚を信じてウシュウシュ種を選んだ決断。見過ごされがちなウシュウシュを並外れたものへと変貌させたのは、幻想を乗り越え自分が何者であるかを思い出したからだというメッセージ。科学者マウリシオ・シャッタ博士もまた、他人の疑いの中で「そこには可能性がある」と信じた人物として重なる。
Espresso — 「マインド(普遍的知性)」
テロワールの科学:標高2,100mの火山性土壌はチェリーの成熟を遅らせ、より多くの糖分を蓄積させ、マウリシオの精製のための完璧なベースを作り出した。2年間のさまざまな菌株・技術の実験を経て発見したヌルクが、ウシュウシュを見過ごされがちなものから並外れたものへと変貌させた。少し冷ますことで品種の甘さが本当によく表れる。
Milk — 「コンシャスネス(意識)」
7年間スチーミングをしてきても、考えすぎると突然直感から切り離されてしまう。意識をシフトさせコンシャスネスに導かせると、求めているテクスチャーと再び繋がれる。焙煎も同様に考えすぎてしまう要素だったが、コンシャスネスの助けで真のポテンシャルを見出した。
Signature — 「思考(創造力)」
「自分は十分に優れていないのではないか」という思考に現実を形作らせることをやめ、大好きなフレーバーをベースにしたドリンクを創造。ウシュウシュのトロピカルな性質がすべての材料の方向性を決定。
材料構成
SCORING ディスクリプター充足度チェック
Scoring Analysis: ディスクリプター評価
WBC競技ルールの「エスプレッソ評価」には「タクタイル表現の正確さ(Accuracy of Tactile Descriptors)」という独立した評価項目が設けられています。審査員は、競技者の説明と実際のエスプレッソの厚みや質感がどれだけ正確に一致しているかをスコア化します。表現が提供されなかった場合、この項目は0点になります。
これらのウェイトや質感が、口に含んだ際やコーヒーを飲み込んだ後にどのようなタクタイル体験(例:渋みがある、シルキーである)をもたらすかが評価されます。プレゼンテーションではフレーバーや後味だけでなく、ボディの重さや口に含んだ時の質感(マウスフィール)についてもしっかりと言葉で説明することが不可欠です。
ミルクビバレッジおよびシグネチャービバレッジには、エスプレッソのような「タクタイル表現」の独立した評価項目はありません。ただし、両方のビバレッジに「テイスト表現の正確さ(Accuracy of Taste Descriptors)」が設けられており、フレーバー(風味)と後味の表現が必須です。表現がない場合は0点となります。
M ミルクビバレッジ — テイスト表現対応状況
S シグネチャービバレッジ — テイスト表現対応状況
Cross Analysis: 6人の統括トレンド
① 産地 & 品種マップ
② 焙煎機傾向
③ フレーバー傾向マップ
全6選手のテイスティングノートを集約し、カテゴリ別の出現頻度を分析。
④ タクタイル & テクスチャー傾向
⑤ 提供温度マトリクス
シグネチャーの冷温傾向
5/6名がシグネチャーを冷温で提供(唯一の例外はItoの45℃温提供)。冷温提供はフレーバーの透明度と香りの閉じ込めを目的とし、CO₂チャージや氷ブレンドと組み合わせた複合技法が主流。
温度変化のイノベーション
Putのミルクコースが最もユニーク:温かい状態で一口 → 凍結ココナッツミルクで10℃に急冷 → 全く異なるフレーバーが出現する2段階体験。Looもフローズンスフィアによる急冷技法を採用。
⑥ ミルク構成の比較
⑦ エスプレッソレシピ比較
品種:ゲイシャの圧倒的優位は継続(5/6名)。しかしHoffのウシュウシュやLooのリベリカなど、ゲイシャ以外の品種を組み合わせる動きも確認された。
産地:パナマが依然として最大の供給源(4/6名がエスプレッソに使用)だが、コロンビア・ウィラとボリビア・ヤナカチの存在感も増加。
精製:全6名が何らかの嫌気性発酵を採用。窒素充填、モスト発酵、ヌルク接種、エチレンガス処理など、発酵技術の多様化が著しい。従来のウォッシュド単体はItoのエスプレッソ(エスメラルダ)のみ。
フレーバー:シトラス系(6/6)とフローラル系(5/6)が支配的。ミルクコースではチョコレート・キャラメル系の甘いノートが集中。シグネチャーではアルコール飲料を想起させる表現(モスカート、白ワイン、コンブチャ)が新傾向。
タクタイル:上位3名はエスプレッソのウェイト+テクスチャーを明確に言語化。「ジューシー」がエスプレッソの最頻出テクスチャー表現。シグネチャーでは「発泡性」が新しい差別化ポイント。
温度設計:シグネチャーの冷温提供が標準(5/6名)。温度変化を演出として活用する2段階体験(Put・Loo)が新技法として注目される。
ストーリーテリング:優勝者Simpsonは日記形式の時系列演出、SunLeiはサステナビリティの循環構造、Putはメンターとの関係性など、技術だけでなく「なぜこのコーヒーなのか」を物語として伝える力が順位に強く影響。