World Coffee in Good Spirits Championship
Finals Presentation Analysis
2025 WCIGS ファイナル概要
2025年WCIGSは、スイス・ジュネーブのPalexpo SAで開催(6/26〜28)。Preliminaryラウンド(Spirit Bar+Stage Presentation)を経て上位6名がファイナル進出。ファイナルではアイリッシュコーヒー2杯+デザイナードリンク2杯を10分以内に提供。Preliminaryスコアはリセットされファイナルのみで順位決定。
超過1秒ごとに1点減点(最大60点)。11分超で失格。Sponsors: Rocket Espresso / Femobook / Scotsman Ice / Pulycaff
ファイナルラウンド 競技ルール要点
計4杯(2カテゴリ×2杯)
IC2杯+デザイナー2杯。提供順自由だが1カテゴリ完了してから次へ。
アイリッシュコーヒー
提供グラス(240ml)必須。コーヒー・ウイスキー・砂糖・無香料乳製品クリームのみ。
スポンサーアルコール必須
未使用でテイスト全項目0点。インフュージョン禁止。
10分+減点制
超過1秒1点減点。11分超で失格。粉砕・抽出はパフォーマンス中必須。
審査体制
テイスト2名+テクニカル/ビジュアル1名+ヘッド1名。
ボディ/マウスフィール評価
ドリンクのボディや口当たりが心地よく説明スタイルに合致しているかを評価。事前説明推奨。
材料の専門的使用
材料の準備法がテクスチャー・温度・視覚効果・フレーバーにどう影響するかの説明が求められる。
評価スケール
0〜6点(0.5刻み)。一部×2/×4重み付け。ICは「Creativity」「Commercially Applicable」の採点なし。
Georgius Audrey Teja(Odi)
Finals — Georgius Audrey Teja (Indonesia)
インドネシアで育った自身のルーツを起点に、「どこへ行っても自分の出発点に立ち返る」というメッセージを展開。ルーツとは単なる土台ではなく、一人の人間としての成長を形作る価値観そのものであるという哲学を、コーヒーとスピリッツを通じて体現した。Omakafé のロゴ(2つのコーヒー豆と1本の根)から着想を得て、「根は周囲から養分を吸うだけでなく、別の形で生態系に還元する」という循環の思想をドリンク構成に反映。インドネシアの伝統的な薬効飲料ジャムゥやバリ島産カルティカ品種、そしてジャワ島にちなむジャワ種コーヒーの品種の旅路を通じて、故郷の文化と世界をつなぐ大使としての姿勢を示した。光るルーツ型コースターの上にカクテルを提供し「すべてのものには固有のルーツがある」というリマインダーとした演出が印象的であった。
温かいボタニカル・アペリティフ
2杯分バッチ→1杯:ウォッカ10ml×40%+カンパリ10ml×25%+ソジュ15ml×16% = 約8.9ml純アルコール / 総量約150ml
レシピ構成(記載量は2杯分バッチ・推測)
Irish Coffee
2杯分→1杯:ライ10ml×43%+グレンモーレンジィ17.5ml×43% = 約11.8ml / 総量約240ml
レシピ構成(2杯分バッチ・推測)
Danny Wilson
Finals — Danny Wilson (Australia)
架空のご近所ダイブバー「ドッグハウス」のバーテンダーとして、現代的技術とエンターテインメント性の高いサービスを両立するコンセプトを展開。3Dプリンター製の犬用ボウル型グラスで提供し、訪れる人すべてを笑顔にする哲学を体現した。World’s 50 Best Bars入選を狙うモダンカクテルバーにおいて、強力なメニューコンセプトと技術・精度を親しみやすいサービスで包み込む必要性を説きつつ、事前バッチ可能なレシピ設計でスピードサービスとの両立を実証。4度目のオーストラリア代表(2018, 2019, 2020, 2025年優勝)としての円熟した演出力が際立ち、デザイナードリンクではスピリッツ蒸留のプロセスに着想を得た「Paragonロック+凍結蓋」や、アイオニック・ポプシクルによる味の時間変化など、バリスタとバーテンダーの道具を融合した革新的アプローチが特徴的であった。
「Thirsty Puppy」
2杯分→1杯:ウォッカ10ml×40%+日本酒リキュール10ml×20%+ラム5ml×40% = 約8ml / 総量約85ml
レシピ(2杯分バッチ・推測)
Doghouse Irish Coffee
2杯分→1杯:ゴスペル10ml×46%+エンジェルズエンヴィ10ml×50% = 約9.6ml / 約215ml
レシピ(2杯分バッチ・推測)
Van Lin(バン・リン)
Finals — Van Lin (Taiwan)
「バリスタが作るコーヒーカクテルとバーテンダーが作るコーヒーカクテルの違いは何か?」という根源的な問いかけを軸に、バリスタ固有の4つの視点——①抽出(同一コーヒーから異なる抽出法でフレーバーと質感を引き出す)、②材料の投入順序(味蕾が感じる順番として設計)、③飲み方の重要性(ダブルリップグラスで2角度から異なるフレーバーを体験)、④感覚体験(日本酒フォグで視覚と嗅覚も刺激)——からコールドカクテルを構築。アイリッシュコーヒーではパナマ・ナインティプラスの「Ruby」ゲイシャを用い、サーモショック+花と共発酵という革新的精製を活かし、温度コントラスト(クリーム5℃ vs コーヒー55℃)でクランベリーの鮮烈さを際立たせた。「バリスタの視点から創造すればするほど、より多くの人々がコーヒーカクテルに恋をする」という信念が結びの言葉。
Irish Coffee
2杯分→1杯:グーデンカロルス25ml×46% = 約11.5ml / 約220ml
レシピ(2杯分バッチ・推測)
コールド・デザイナードリンク
2杯分→1杯:グアバリキュール10ml×18%+白ウォッカ20ml×40% = 約9.8ml / 約115ml
材料投入順序=味蕾の感じる順番(2杯分・推測)
Christos Klouvatos(クルヴァトス)
Finals — Christos Klouvatos (Greece)
「クラシック・アメリカン・バー」のバーテンダーとしてコーヒーを使ったクラシックカクテルのメニューを提供するコンセプト。コールドではデイジー・カクテル(マルガリータの古典形式:スピリッツ+酸味+甘いリキュール)にコーヒーを加えて「コーヒー・デイジー」として再構築し、ホットでは1943年にシェフ・ジョー・シェリダンが疲弊した乗客のために考案したアイリッシュコーヒーの歴史に敬意を表しつつ現代版食後用として提案した。暑い国ギリシャでの食前酒カクテル文化と食後の温かいコーヒーカクテル文化という、2つの時間帯を跨ぐバー体験を設計。嫌気性発酵ピーチ・コーディアルやワインリダクション、凍結蒸留クラリファイドウォーターなど先端的な自家製材料を、クラシックなカクテル構造の中に巧みに組み込む構成力が際立つプレゼンテーションだった。
Coffee Daisy
1杯推測:ケテルワン推定25ml×40%+リキュール5ml×25%+コーディアル12.5ml×5% = 約12ml / 約110ml
レシピ(2杯分・推測)
Modern Irish Coffee
2杯分→1杯推測:サンティス推定10ml×43%+ウッドフォード15ml×45% = 約11.1ml / 約225ml
レシピ(2杯分・推測)
Vladyslav Demonenko(ヴラド)
Finals — Vladyslav Demonenko (Germany)
「ほとんどの思い出は言葉から始まるのではなく、フレーバーやアロマのような柔らかく目に見えないものから始まる」という洞察を起点に、2つの個人的記憶をカクテルに変換したプレゼンテーション。コールドドリンクでは夏休みに田舎で友人と凍るほど冷たいコーラのボトルを分け合った記憶を「チェリーコーラ」として再構築し、ガーニッシュのチェリー・スフェリフィケーションを食べることでフレーバーが完全に変化するインタラクティブな体験を設計。アイリッシュコーヒーでは初めての競技会という記憶を投影。「ミクソロジスト」として材料だけでなくコーヒーもミックスするアプローチから、パナマ・ゲイシャとコロンビア・ジャワを1:1でブレンド。白味噌コーディアルや昆布塩溶液など日本の発酵食材を駆使した独創的レシピ設計と、ソーダストリームによる炭酸化技術が特徴。
コールド・ハイボール
2杯分→1杯:ウォッカ10ml×40%+ニッカ5ml×45%+カボス10ml×20% = 約8.3ml / 約150ml
レシピ(2杯分・推測)
Irish Coffee
記載量が1杯分の場合:サンティス10ml×40%+カバラン10ml×58%+コンパスボックス5ml×46% = 12.1ml / 約200ml → ≈6%。2杯分なら≈3%。
レシピ(1杯/2杯分不確定)
Gary Au(ゲイリー・アウ)
Finals — Gary Au (Hong Kong)
コーヒーカクテルを特定の場所やシーンに限定せず、カフェ&ベーカリー、レストラン、お祝いの席など様々な人生の場面で提供するビジョンを描いたプレゼンテーション。温かいカクテルでは香港名物デザート「エッグタルト」をクラシック・エッグノッグとして再構築し、エッグタルト型の器やトーチで炙ったキャラメリゼ・フォームで焼きたての温もりを演出。アイリッシュコーヒーではパナマの祝祭用フルーツケーキ(ドライフルーツ、スパイス、クリーム、ラム酒の4要素)からインスピレーションを得て、実際にパナマのCotaケーキを添えて提供した。ゲストの目の前で作りストーリーとコンセプトを伝えることを大切にしながらも、湯煎やプレバッチ対応でスピードサービスにも言及。コロンビアの生産者との写真やパナマのシェフ情報を添え、コーヒーカクテルが地元の人々と観光客を歓迎する手段となりうることを示した。
Coffee Egg Nog
1杯分推測:エリクス10ml×42%+バニラリキュール10ml×25%+梅酒5ml×12% = 約7.3ml / 約105ml
レシピ(1杯分・推測)
Celebration Irish Coffee
2杯分→1杯推測:Ghost推定12.5ml×45%+ミズナラ12.5ml×43% = 約10.9ml / 約225ml
レシピ(2杯分・推測)
2025 WCIGS ファイナル 統括分析
6名のファイナリストが提供した計12杯(デザイナードリンク6杯+アイリッシュコーヒー6杯)のデータを横断的に分析し、使用されたコーヒーの産地・品種、アルコール度数、テイスト表現、提供温度、マウスフィール/テクスチャーの傾向をまとめました。
コーヒー産地の分布(全12杯で使用されたコーヒー延べ14ロット)
傾向:パナマ産が圧倒的優勢で、特にNinety Plus農園のゲイシャ(Van Lin, Christos)やFinca Deborah(Vlad, Danny関連)が多数使用。コロンビアはIC用に多く選ばれ、ウィラ地域が集中。6人中5人がパナマ産を少なくとも1杯に使用しており、ゲイシャ品種を軸としたパナマの存在感がファイナルレベルでの標準となっている。
品種の分布
傾向:ゲイシャが延べ14ロット中6ロット(43%)と圧倒的。特にデザイナードリンクではゲイシャのフローラル+フルーティーな特性がカクテルとの親和性で選ばれている。ICではジャワ種(Odi, Vlad)やブレンド(Danny)など、チョコレートやボディを重視した選択も見られ、用途に応じた品種使い分けが明確。嫌気性発酵・カーボニックマセレーションなど先端精製が全員に採用されている。
推定ABV分布(全12杯)
傾向:デザイナードリンクはABV 5.5〜12%と幅広く、コールドカクテルほど高い傾向(希釈が少ないため)。ICは全員4〜6%の狭い範囲に収束しており、コーヒー量が多いためアルコール度数は抑えめ。優勝のOdiはデザイナー5.9%・IC 4.9%と両方とも中庸〜やや低めで、アルコールに頼らずフレーバーの複雑さで勝負した構成。
提供温度マッピング
● 塗りつぶし=液体温度 ○ 白抜き=クリーム温度
傾向:コールドドリンクは3〜10℃の範囲に集中。ウォームデザイナーは40〜43℃。ICの液体温度は40〜60℃と幅があるが、50〜55℃の範囲がボリュームゾーン。クリーム温度は4〜8℃が主流だが、Vladのみ15℃と高く「バニラの揮発アロマを強調する」意図を明言。全員が温度を具体的な数値で宣言しており、温度がフレーバー体験の設計の中核になっている。
テイスト表現・テクスチャー・マウスフィールの傾向
フレーバー傾向:フルーツ/ベリー系が12杯中11杯と圧倒的で、チェリー(6杯)が最頻出。チョコレート系はICで特に多用され「ミルクチョコレート」が定番。キャラメル/バニラ/バタースコッチなどの甘味系フレーバーはウイスキーとの組合せで自然発生的に現れている。
テクスチャー傾向:「シルキー」と「クリーミー」が最多使用の表現で、全員がいずれかを含むマウスフィール宣言を行った。特にファイナルレベルでは「1口目と2口目で質感が変化する」設計が主流化しており、Danny(ポプシクルで10℃→6℃)、Vlad(ガーニッシュでフレーバー完全変化)、Van(ダブルリップグラスで2つの飲み口)と、6人中3人が時間経過やインタラクションによる変化を設計している点が顕著。
抽出方法の傾向
(浸漬式)
(Odi使用)
(補助的使用)
傾向:ICではクレバードリッパー(浸漬式)が圧倒的主流。10分間の制限時間内で安定した高濃度抽出が可能なため、ファイナルの標準的選択肢。デザイナードリンクではエスプレッソが主流だが、Odiはフィルター(浸漬式)のみで優勝しており、エスプレッソマシン必須ではない点が注目に値する。粉量は37〜71gと幅広く、特にVladの71g:400gは極端な高濃度レシピ。全員が抽出比率・温度・攪拌時間を具体的数値で宣言し、「なぜこの抽出方法を選んだか」をフレーバーへの影響と関連付けて説明している。
2025年ファイナル全体の傾向サマリー
6人中5人がパナマ産を使用し、ゲイシャ品種が全コーヒーの43%。Ninety PlusやFinca Deborahなどの農園名が繰り返し登場。
嫌気性発酵、カーボニックマセレーション、共発酵(花/葉/フルーツ)、サーモショック等の先端精製が全員に採用。ウォッシュト単体は皆無。
6人中3人(Danny, Vlad, Van)が、飲む行為自体によって味・温度・質感が変化するインタラクティブな体験を設計。単一の味ではなく「ジャーニー」としての飲料体験が主流。
全員が温度を具体的数値で宣言し、その温度がフレーバーにどう影響するかを説明。IC液体は50〜55℃がボリュームゾーン、クリームは4〜8℃が主流。
フレーバー表現でチェリー(6杯)とチョコレート(9杯)が最頻出。特にICではチョコレート系の表現がほぼ必須となっている。
Odiは唯一エスプレッソマシンを使わずフィルターのみで優勝。ABVも控えめで、テーマ(ルーツ)とコーヒーの品種背景(ジャワ種の旅路)を直結させた一貫性の高い構成が評価された。